mayunanoblog2の日記

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恋のはじまりは、いつも……(二次創作:らんま1/2SS あかね・乱馬・良牙)

       乱馬に会いたくない   

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「あたし、先に帰ってるから」

 乱馬のうろたえたような声が聞こえた気がしたが、あかねはゆっくり踵を返した。

 以前なら、感情に任せて乱馬を殴るか蹴り飛ばすかして、全速力でその場から駆け出したものだ。駆け出すというより、逃げ出すといった方が当てはまるかもしれない。登下校の通学路や町中で偶然シャンプーに会うたびに、彼女に抱きつかれて戸惑う乱馬。明らかに困惑しているが、かといって強く拒絶したりしない。シャンプーは昔から素直で、愛情表現も直球で熱烈だった。乱馬の気持ちなどおかまいなしで、毎回自身の想いを全身で告げている。

「偶然逢えるなんて、これはもう運命ね! 乱馬、今から私とデートするある!」 「し、しねーっての! だ、だから抱きつくなって、おい……っ」  乱馬の顔は真っ赤だ。口ではああは言ってても、あかねの目にはあまり嫌そうに見えない。元々照れ屋で純情な面もある男だから、あえて照れ隠しで拒絶の言葉を並べているように見える。だからシャンプーも、彼から離れようとせず、ますます彼に抱きついて、無邪気に甘えて見せたりしている。

「乱馬? 今さら照れることないね!」 「だから、照れてるとかじゃねーし……」  乱馬の胸に顔をすり寄せて、彼の背中に手を回す。特徴のある高い声で甘えながら、可愛らしい上目使いとともに囁く。そんなシャンプーの手や腕をやさしく振り払いつつ、弱々しい抵抗を示す許嫁。

(あたしが目の前にいるのに、本気で抗ったりしないのよね)

 そういうところも変わらない。強い態度に出て女の子を傷つけたくないのか、それともシャンプーを傷つけたくないのか。

(かわりにあたしが傷つくことになっても、かまわないってことなのよね?)

 あかねの心中は、またもや黒い靄が広がっていく。

「それともあかねに遠慮してるのか? ……乱馬はやっぱりあかねがイイのか?」

 ほんの一瞬、沈黙になる。あかねが足を止めるのと、乱馬が息を飲むのが同時だった。  こんな時、乱馬は間違っても『あかねがイイ』とは言わないし、言えない。それを見越しての、シャンプーの問い掛けだったのかもしれない。そういった計算も入れた言葉だったのだろう。まだその場にいるあかねをじゅうぶんに意識して、顔だけは思い詰めたふりをして乱馬の返事を待った。

「だっ! 誰が! なんでおれがあかねなんかに遠慮しなきゃなんねーんだ!? こいつは関係ねーよ!」    予期していた言葉とはいえ、あかねの表情は固くなった。肩越しに見た乱馬と目と目がかち合う。先に目を反らしたのは、乱馬だった。

「やっぱりある! 乱馬は天道家悲願でもある要望の、あかねとの祝言を蹴った。あかねは関係ないと思ったけど、今確認して安心したある」

 乱馬はなにか言おうとしていたが、シャンプーの先制攻撃で口を開くきっかけを逸した感じだった。

 あかねはシャンプーの狡さを感じた。けれどそれ以上に、乱馬の不甲斐なさとだらしなさを痛感した。

【天道家悲願の要望】

 二人が許嫁となったのは、あかねの父・早雲と乱馬の父・玄馬の願いである。勝手に決められたものではあったが、今のシャンプーの言い方だと、許嫁という関係に執着しているのは天道家であり、ひいては〃あかねだけが一方的に望んでいる〃 ということになる。

 わざとなのか、本当にそう思い込んでいるのかは定かではないが、シャンプーの解釈をはっきり否定しなかった乱馬に、あかねは全身に怒りの熱が駆け抜けた。

 今度こそ本当に乱馬の顔も、二人の姿も見たくなくない。あかねは居たたまれず、その場から走り出した。

 あかねが二人の距離から離れていっても、一向に乱馬は彼女を追いかけてくる様子はない。シャンプーが彼を放さないのは当たり前。問題は、乱馬が本気になれば、シャンプーの抱擁など簡単に引き剥がせること。それをしないということは、その気がないということだ。その事実があかねを不快にする。けれど怒りとは違った。だから体力を使って乱馬を殴ることもしなかったのだ。  

 呪泉洞の戦いのあとの仮祝言がぶち壊されてから、半年ほど過ぎた。

 あかねはあの激しい戦いの時にみせた乱馬の態度を、疑うようになってきていた。    目を覚まさない自分を抱き抱えたまま、深い後悔と激しい喪失の痛みに耐えられず、我を失って取り乱していた乱馬。身体の力を失っていたあかねは、意識は戻ってきていたが感覚の戻りが追い付かず、瞼すら重くてなかなか目を開けられなくて。彼のために早く目を開けて、

〃あたしは生きている。無事よ〃

と、伝えてあげたかった。乱馬の愛と悲しみがわかったからだ。正直、乱馬がこれほど自分のために取り乱すとは思っていなかった。〃取り乱す〃という言葉は、適当ではないかもしれない。あの時の乱馬の様子をどう表現したらいいのだろう?  あの瞬間、乱馬の恋の在処がどこにあるのかはっきり感じることが出来た。

 あの日以来、あかねと乱馬の関係はなにも変わっていない。相変わらず乱馬はあかねに対して口は悪いし態度もでかい。彼女の神経を逆撫でするような行動を、平気でする。それに対していちいち応戦するあかねを、『可愛いげのねー女』と決めつける。

 右京やシャンプーたちの求愛を撥ね付けることもなく、自分はあかねに曖昧な態度を取り続ける。さらに平気で暴言を吐いている男になぜ、あかねの方だけが素直で可愛らしい態度を取らなければいけないのか?   サフランとの戦いのあとも、結局乱馬は変わらない。期待していただけに、衝撃は大きい。もはや傷つくことすら慣れ過ぎた。日に日にに少しずつ、あかねの心は虚ろになる。その空虚さが、彼らを見つめる視線を冷めさせていく。

『先に帰ってるから』

 そう告げたときのあかねの声は、まえのように不機嫌そうな低いものでも、怒りを込めた激しい口調でもなかった。淡々と放たれた言葉が、かえって乱馬の胸に突き刺さったのだが、そんなことはあかねもシャンプーも知る由もない。

   あの場から離れて1人になり、ようやくあかねはなんとも形容しがたい胸の内から解放された、何気なく顔を上げると、春特有の薄い水色の空。視界のあちらこちらでゆるい風に揺れる染井吉野は、先日の雨のせいで4割ほど散ってしまった。もう葉も見え始めている。この季節で一番見映えの悪い時だ。路上の隅には散らされた花びらが、風に寄せられた枯れた葉といっしょくたになっている。

 ここ最近、シャンプーや右京、たまに小太刀も加わる乱馬争奪戦は、以前と同様かそれ以上に激しい。お流れになったとはいえ祝言をあげかけたことが、彼女らを一層焦らせたのだろうか。そしてその後のあかねと乱馬の態度が全く変化がないことを見て、まだまだ付け入る隙があると睨んだのか。

(あいつはもしかして、今のままの状態がベストだと思っているのかもしれない……)

 彼女たちとケリをつけることが【出来ない】のではなく、【あえてしない】のだとしたら? それはとりもなおさず、あかねとの関係もきちんとしたものにしないという意思表示だ。それが、〃今はまだ〃なのか〃今後もずっと〃なのかは、さだかではないが。

 これが乱馬の優柔不断さからなのか、それとも。

 あかねは歩きながらひたすら考えをまとめようとした。    自分は乱馬本人ではないのだから、彼の本心はわからない。けれど、呪泉洞での彼のことと、それまでの過去の彼の行動、そして例の祝言事件からの彼の行動。

 あかねはまっすぐ家に帰るのが嫌になり、方向を変えた。このテの考え事は、人の多い天道家ではしたくない。あかねは鞄を持ち直し、川のある方を目指した。

 先週までは春といっても肌寒い日が多かったが、今週に入り急に気温が高くなった。春の陽気は足取りを軽くさせる。家に帰る前に、この重い気分を少しでも軽くしたかった。

        ~~†~~†~~†~~†~~†~~

 仮に、仮にだ。あかねのことが大切で、失いたくない女性だとして。それはそれとして、彼女たちのこともそれなりに大切で、失いたくない。そう考えれば、すべて辻褄が合う気がした。

 人通りのない石橋の欄干にもたれ、すぐ下を流れる川を見つめながら、あかねは冷静に分析した。

 彼女自身が叩き出した分析。これが事実なら、自分のために悲しんでくれたあの男の態度も、ちっとも嬉しくない。あかねは別の考えを模索しようとしたが、ついでのようにアノ事件が脳裏によみがえってきた。

(そういえば反転宝珠。あの時のあいつ……)

 思い出すだけで、欄干に乗せていた手に力が入る。

 それならば、あの忌まわしい半天宝珠の一件の乱馬の下衆な行動も頷けるというもの。要するに乱馬は、あかねを失うことはもっとも耐えられないが、シャンプーを失うことも我慢できない質なのだろう。じゃなければ〃大切なはず〃のあかねをだしにしてまで、シャンプーの気を引こうとするわけがない。この法則でいくと、右京も例外ではないだろう。右京が乱馬を振ろうとすれば、平気で自分やシャンプーを利用するかもしれない。

(本当に最低な奴……!)

 辺りは静かだった。メインストリートではないだけに、道行く人は疎ら。それでも時折散歩中の人間や、家路に向かう者があかねのすぐ背後を通過したりする。怒りと戸惑いのあまり思わず声を漏らせば、挙動不審に思われる。態度に出せない感情は内向し、彼女の表情を険しくさせた。

「そんな男にあたしは……。あんな奴のためにあたしは、自分から祝言をあげる決意をして、ウェディングドレスまで着てやったなんて」

 父たちに祝言の話を持ち出すことも、非常に勇気がいった。あの憧れのドレスを纏うことも、あかねにとっては特別な決心だった。そこまで女性である自分から行動をしたというのに、あの男は。あの土壇場で誤魔化し、しらを切ったのだ。

ーーあかねを好きだとは、言ってない。とーー

 普段は平静を装っているが、本当はもう限界だった。この恋は、自分には合わないのではないかと。あの状況で覚悟を決めずにあかねに恥をかかすのだから、乱馬の想いはしょせんその程度のものだったのだ。

 それを知ってしまったら、もう今までのように乱馬に対して嫉妬をみせることも出来なくなった。決定的事実を知るはずのないシャンプーを前にしても同様である。なぜだか自分のしたことがものすごい滑稽に思えて、怒る行為すら躊躇するようになってきたのだ。

 あかねは欄干に身を乗り出し、川面に映る自分の顔を覗き込んだ。そよ風に撫でられさざ波が立ち、あかねの顔が歪む。

「あたしの恋って、どうしていつもこうなんだろう……?」

 うまくいった試しのない恋。初恋の相手は、ずっとかすみのことを想っていて、自分はどこまでも〃妹〃のような立場だった。

 次の恋では幸せになりたかった。けれどもう継続することに疲れを感じ始めている。この恋をやめるには、彼を諦めることだ。許嫁の立場を返上すればいい。

 石造りの欄干に乗せていた手が、冷たくなっていた。

 あかねは顔を上げて遠くを見た。どこからか風に乗って舞う桜の花びらが、陽光に照らされて白く光る。美しくても、散る花弁は哀しく映る。儚さが、自分の恋のように思えた。

(この恋を手放すことが、出来るのかしら? あたしが、乱馬を)

 乱馬とは、いろいろなことがあった。ありすぎた。嫌なことも悲しいことも、傷ついたこともたくさん。けれど楽しいことや嬉しいこと、ときめくことも、ないわけではなかった。東風との、どこかほんわかしたゆるやかな恋とは違い、乱馬の存在は強烈過ぎた。あかねの日常が、すっかり塗り替えられるほどに。  東風との恋も乱馬との恋も、あかねの片恋だった。あかねにとってはそうだった。互いの想いをはっきり言葉にして確認し合ってはいない。正式に付き合ってもいない。けれど同じ片恋であっても、性質は全く異なりすぎている。

 それらが未練となり、あかねは躊躇した。もしもこの恋を捨て去ったら、自分は平気でいられるだろうか? 東風の時は、あんなに辛かったけれど、また笑えるようになった。ならば今度も大丈夫なはずだ。

(そうよ、大丈夫。きっとあたしは立ち直れるわ)

 時折強くなる風が、さらにはらはらと花びらを運び、雪のように春の景色のなかを舞う。

「ひとりでも、大丈夫」

 あかねは自身を鼓舞するように、小さく呟く。元々は男嫌いだったのだから、恋なんかしなくても平気なはず。

 しかし。

 強がって突っ張ってみても、やはりあかねは寂しかった。

〃誰か。誰か、この恋を。この想いを消してくれたら……っ〃

 きつく目を閉じて、欄干につっぷしてしまう。藍色がかった濃い髪に、やわらかな花弁が1~2片舞い降りた。

            2

           

「あかねさん!」

 自分の名を呼ぶ真剣な声色に、あかねはビクッと反応した。

「……あかねさん、あ、あの。お久しぶりです」

 振り向くと、大きなリュックと番傘を背負った精悍な男が、緊張した面持ちであかねに歩み寄ってくる。額を隠す前髪の下の目元は鋭いが、彼があかねを見るときはいつもやさしくなる。こうやってあかねに向き合うときは、たいてい嬉しそうに微笑んでいるのだが、今日はなんとなく緊張した面持ちだった。

「良牙くん! ……久しぶりね!」    今まで孤独感に押し潰されそうだったあかねは、そんな自分をすくい上げてくれた良牙に、心から安堵した。

続きはpixivでね♪ by シーナ

 数年ぶりに再燃したらんま1/2熱❣️   薄幸な良牙くんを幸せにしたくて、昔はなかばムキになって投稿していたものです(笑)。

 読むなら〃乱あ〃。書くなら〃良あ〃なのですが、そもそも読みたくても〃良あ作品〃って超絶少ないですからね~💦

 でもらんまは楽しい、面白い! 原作やアニメより、二次の方がおもしろい。二次の方が乱馬くん、イケメンですからね❤️ 只今、投稿の古い順から乱あ小説、しっかり読み返しています。そのせいで眼精疲労がまた……(◎-◎;)