mayunanoblog2の日記

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らんま1/2二次小説〃ツキモノオトシ 3〃(良あ)

一部抜粋

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 時折通るその道に、少し以前にマンションが建った。さほど大きくはないマンションだったが、そこの敷地内には紫陽花が今を盛りに咲いている。区が運営している大きな公園に咲いている紫陽花は、あまり綺麗ではなかった。葉は虫食いだらけで葉脈しか残っていない状態で、色褪せてほつれた布切れのようになっていて、花の色も冴えなくて。季節の花のあんな有り様は、悲しくなってしまう。

 だがそこのマンションの植え込みは、管理者の手入れの行き届いていることがよくわかる咲きぶりだった。葉は大きく瑞々しい。花は真っ白や青紫、紫色のものが、鮮やかな表情で微風に揺れている。

 あかねは紫陽花が好きだった。

 微かに太陽の残り日が差す、雲の多い日に艶やかさを添える6月の花。小さな花が集まった半球体のそれは、大振りで美しい。はっきりしない天候が続くこの時期に、明るさ気分を引き出してくれる風物詩である。

 大切に育まれている花容を、もっと間近で見ようと歩を進める。雨がよく似合うこの花は、湿潤な空気に包まれて華麗にしっとりと色づいていた。

 道路から少し奥まったこの場所には広いスペースが設けられていて、住人や近隣の人間の憩いの場となっている作りだった。けれど辺りに人はいない。たまに道路の向こう側に渡ろうとする人間が、横着してこのスペースを突っ切っていくくらいのものだった。

 どれくらい花を眺めていただろう。

 あかねは花に夢中なふりをして、ずっと時間を潰している。この先を行けば、例の空き地だ。良牙が野宿しているであろうその場所に、なかなか足が向けられない。ここまでは勢いで来てしまったが、昨日の今日である。良牙に会って、なんと声を掛けていいのかわからなくなってしまい、いったん悩み始めると、もう一歩も進めなくなってしまっていた。

(良牙くんに会うのに、こんなに緊張するなんて……)

 微風は肌に涼しいのに、変に汗ばんでくる。梅雨はそういう季節である。

「どうしよう。やっぱり会いに行ったりしたら、嫌がられるかしら?」

 良牙は今、一人になりたいかもしれない。あかねはいつも一人で行動している良牙の姿を思い浮かべた。

「はぁ……っ」

 ここへ来て、幾度目の溜め息か。一人で紫陽花を見ている自分の様子を、周囲の人間が不審に思うかもしれない。

 思いきって空き地へ行くか、それともこのまま戻るか。

 あかねは植え込みの奥に咲く、一際白い紫陽花を見つめながら葛藤した。

「あ、あかねさん?」

 不意に名を呼ばれて、あかねは弾かれたように振り向く。驚きのあまり、持っていた鞄を取り落としてしまう。

 一瞬間、誰の声かわからない程心が乱れ、大きな瞳をさらに見開いて声の主を見つめた。

「やっぱりあかねさん。……こんな場所でなにをしてるんですか?」

 良牙も驚きの表情であかねを見つめてくる。それでも目の奥には仄かな光が瞬き、声音はやわらかい。

 見ると良牙は手にコンビニの袋を提げている。なにか必要なものを買い足しに行っていたようだ。

 あかねは驚きの波が引かず、うまく言葉が出てこない。それでもいつもの穏やかな良牙の表情に緊張が解け、どうにか薄い笑みを作ってみせることが出来た。

「……あの。大丈夫ですか?」

 良牙は入り口の段差を降り、自然な態度であかねに近づいてきた。そしてさきほどあかねの手から落ちた鞄を、さりげなく拾う。

「今日は……、学校はいいんですか?」

 制服姿のあかねを認め、そんなことを聞いてきた。

「うん。今日は午前中だけだったの」

 あかねは礼を述べつつ鞄を受け取った。最初の言葉が出てしまえば、咽頭の奥のつかえが取れたように呼吸が楽になる。

 あかねの返事を聞きながら、良牙は一瞬表情を険しくし、素早く視線を巡らせた。

「あいつは……」

「あたし一人よ」

 あかねは強調するように言い、また紫陽花の方を向いた。やはりまだ、良牙と面と向かうことが気まずいような、気恥ずかしいような感覚が残っている。

 乱馬の姿を探した時にみせたあの目付き。あれを嫉妬の感情だと気づかないあかねは、良牙が昨日のことでまだ気分を害していると解釈したのだ。

「あ、あかねさん、いつからここにいたんですか?」

「ちょっと紫陽花を見ていたの」

 わざわざ紫陽花を見るためだけにここに来たのも不自然な行動だ。良牙は怪しむだろうか?

「綺麗だったから。あたしね、とくにこの額紫陽花が好きなの」

 聞かれてもいないのに言葉を続けてしまい、口に出してから決まり悪くなった。

(どうしよう!? 突然こんな場所に現れてそんな話をするあたしのこと、呆れたかな?)

 けれどあかねの耳には、いつもと変わらない良牙の返答が滑り込んでくる。

「へぇ、額紫陽花ですか。俺はここを通った時、紫陽花なんて目に入りませんでした。ましてや種類なんて……。そういえば形が違う。〃額紫陽花〃っていうんですね」

 あかねのすぐ背後で、きちんと関心を持った反応を示してくれた良牙の声がした。

 いつもの良牙だ。あかねは救われる思いがした。

 あの状況の後なのに、こんな普通の態度で接してくれるとは思っていなかった。あかねは感動し、安堵し、やがて素直な気持ちになる。そしてそれは言葉となって口から出た。

「あの白いやつ、とくに綺麗ですね」

 あかねは青い色も好きだが、一番好きな色は白い種類だった。ただ、白の花は花弁が少しでも色褪せたり枯れたものが紛れていると目立つ。ここの紫陽花は、白さが目に染みるほど美しい。可憐なピンクや艶やかな赤紫色ではなく、楚々とした色合いに目を留めるところが、良牙らしい気がした。

 良牙は屈託ない。きっと態度に出さないようにしてくれているのだろう。内心はあかねがなんのためにここにいるのか、疑問に思っているに違いない。

「あなたに会いにきたの」

 あかねは良牙が気を惹かれた白い紫陽花を見つめながら、口を開く。

「ここで紫陽花を見ながら、気持ちを落ち着けていたの……。良牙くん、怒ってると思ってたから、なかなか空き地まで行く勇気が出せなくて」

 あかねは震えそうになる声を抑え、一気に言った。

「昨日はごめんなさい」

 昨夜は〃良牙を少しでも元気付けたい〃 と考えていたあかねだったが、ここへきて急にもっと肝心なことを思い出した。自分は昨日、おつかい帰りに良牙に余計なことを言った。思えばあの時から良牙の様子が変だった。知らなかったとはいえ、不用意にあかりの話題を出したことが原因なのは明白だ。

「ちょ……っ、ど、どうしてあかねさんが謝るんですか!?」

 良牙の困惑を感じ、あかねは唇を噛み締めながら振り向いた。

「お、俺、謝られるようなこと、されてな」

 あかねは言葉を選んでいるうちに、なにを言っていいのかわからなくなってくる。その黙ってしまった表情が頼りなげで切なさが滲み、良牙も次の言葉を飲み込んでしまう。

 ぬるい風が紫陽花の茎をそっとしならせ、二人の間を音もなく抜けていく。粗い煉瓦の敷かれた地面を見下ろし、俯いてしまった二人は、互いに次の言葉の接ぎ穂を探しながら、動かなくなる。

 やがて深く息を吸い込んだ良牙が、顔を上げた。

「あ、えっと……。あかねさん、少し時間、……良いですか?」

 まるでデートの誘いかのように緊張した面持ちで、良牙はせわしなく両手の指を付き合わせたり絡ませたりしながら切り出した。

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 良牙くんとあかねちゃんの絡みシーンってあんまり無いんですよね。だから自分で二人のツーショット場面を、たくさん作っています✨ 過去作品をたまに自分で読み返して、その都度勝手に胸キュンしたりして。(侘しい……💦)  しゃーないですよね、王道は乱あなのだから、良あシーンなんてあるだけ奇跡。しかも乱馬に対するあてつけみたいな位置付けですもんね~。そんなわけだから、私は逆を行きます。

噛ませ犬的役割は、あくまで乱馬!w

 私は良牙くんとあかねちゃんが二人だけで語り合う、普通の場面が好きなんです。で、純情で不器用な良牙くんが、鈍いあかねちゃんに振り回され気味というシチュエーションが大好物でして♥️

 これからもマイペースで〃良牙くんの幸せ〃を捏造し続けますので、よろしくお願い致します。

「私は断然、良牙ファン!」「あかねちゃんの相手はやっぱり良牙くん♥️」な方々は、ぜひお暇潰しにどうぞ(o≧▽゜)o